この記事の要点
- 反対意見は人ごとにばらばらに見えるが、「お金」「進め方」「暮らし」の3つ、7つの型に分けられる
- 型ごとに、答えるための材料は決まっている。説明会の前に想定問答として用意できる
- 目指すのは論破ではなく、懸念が記録に残り、答えが返ってくること
マンションの設備更新、大規模修繕、自治会の規約の見直し、社内の仕組みの入れ替え。何かを変えようとして説明会を開くと、必ず反対の声が出ます。準備した資料を説明し終えた直後に、厳しい質問が続く。その場の空気が一気に重くなり、「今日は決められない」で終わってしまう。調整役を務めた方なら、一度は経験があるのではないでしょうか。
反対意見は、出てくる言葉だけを見ると人ごとにばらばらです。ところが、その奥にある懸念を一つずつたどると、実は数えるほどの型に収まります。当社は、説明会で出る反対意見を次の7つの型に分けて準備しています。
反対の言葉と、本当の懸念は違う
「そんな工事は必要ない」という発言があったとします。言葉どおりに受け取ると、必要性を説明し直すことになります。ところが話を聞いていくと、本当の懸念は「一時金を求められたら払えない」という費用の不安だった、ということがよくあります。この場合、必要性をどれだけ丁寧に説明しても、懸念は解けません。
反対意見に答えるときは、まず「この発言はどの型か」を見分けます。型が分かれば、返すべき答えの種類が決まります。言葉に反応するのではなく、懸念に答える。これが説明会を前に進める一番の近道です。
7つの型と、用意しておくもの
型ごとに、よく出る言葉、その奥にある懸念、説明会の前に用意しておく材料をまとめます。
- 1 費用 「高すぎる」「今やる必要があるのか」
- 負担が増えること、今の暮らしに響くことへの不安です。金額の根拠に加えて、「やらなかった場合に、いつ、いくらかかるか」を並べて見せます。用意するもの:金額の根拠と、やらない場合との比較
- 2 公平 「使わない人まで払うのか」
- 自分だけが損をするのではないか、という懸念です。誰が得をし、誰が負担するのかを対応させて示し、使う人が多く負担する仕組みがあれば、それを先に説明します。用意するもの:受ける得と負担の対応表
- 3 手続き 「聞いていない」「いつ決まったのか」
- 中身より、知らないところで話が進んだことへの不満です。いつ、誰が、何を検討してきたかの経緯を時系列で示します。用意するもの:検討の経緯と、これからの決め方の日程
- 4 代案 「もっと安い方法があるはず」
- 比べた上で選んだのかを確かめたい、という声です。検討したほかの方法と、選ばなかった理由を一覧で見せます。用意するもの:検討した案の比較表(◎○△×)
- 5 不信 「一部の人と業者で決めたのでは」
- 選び方の公正さへの疑いです。業者や方式をどんな基準で、どんな手順で選んだかを示します。基準は検討を始める前に決めておくのが理想です。用意するもの:選定の基準と手順の記録
- 6 生活への影響 「工事中の音は」「駐車場は使えるのか」
- 賛否ではなく、自分の暮らしがどう変わるかを知りたい、という声です。期間・時間帯・使えなくなるものを、具体的に示します。用意するもの:影響の出る期間と範囲、問い合わせ先
- 7 今のままでいい 「困っていない」
- 変わることそのものへの抵抗です。今のままにした場合に、数年後どうなるかを見える形にします。急かすのではなく、判断の材料を渡します。用意するもの:今のままにした場合の見通し
型の数が限られているということは、説明会の前に答えの大半を用意できるということです。逆に、当日に初めて聞く質問が多い説明会は、準備の段階で何かが抜けています。
説明会の前に、想定問答を作る
当社は説明会の前に、7つの型ごとに「出そうな質問」と「答え」を書き出した想定問答を作ります。作り方は次のとおりです。
- 型ごとに、出そうな質問を書き出す。アンケートの自由記述や、理事会・担当部署に寄せられた声が一番の材料になります。
- 答えと、その根拠になる資料を対にする。口で答えるだけでなく、「資料の何ページ」と示せる形にします。
- 説明資料の本文に先回りして入れる。よく出る質問の答えは、質問される前に資料で説明しておくと、当日の空気が大きく変わります。
特に効くのは、3の「手続き」と5の「不信」への備えです。この2つは中身ではなく進め方への不満なので、当日どれだけ丁寧に説明しても、その場では解けにくい型です。経緯と選び方を、最初から資料に載せておきます。
その場で答えられないときは
準備をしても、答えられない質問は出ます。そのときに避けたいのは、その場の思いつきで答えることです。後で訂正が必要になると、ほかの説明まで信用されなくなります。
答えられないときは、「確認して、いつまでに、どの方法でお答えします」と期限と方法をはっきり言い、質問を記録に残します。そして約束した期限までに、全員に見える形で答えを返します。答えが返ってきたという経験が、次の説明会での信頼になります。
反対意見は、計画を良くする材料でもある
説明会の目的は、反対する人を言い負かすことではありません。目指すのは、懸念がきちんと記録に残り、答えが返ってきたと参加者が分かることです。その上で決をとれば、賛成しなかった人も「話は聞いてもらえた」と受け止めやすくなります。
また、反対意見の中には、計画の見落としを教えてくれるものもあります。型に分けて受け止めると、感情的な言葉の奥にある、計画を良くする指摘が見えてきます。
当社は、管理組合や事業者と住民・関係者の間に立って、説明資料と想定問答の準備、当日の進め方、その後の回答までをお手伝いしています。